選手が語る“Jリーグ”クラブ FC町田ゼルビアとは。
駒沢大を卒業後、FC町田ゼルビアに加入し今年6シーズン目を迎えるMFの柳崎祥兵選手と、清水エスパルス、ヴァンフォーレ甲府を経て地元町田に帰ってきて8シーズン目を迎えるDF津田和樹選手。関東サッカーリーグ、JFL時代の苦悩やJリーグ昇格の歓喜など全てを経験しているお二方が抱く、地域に根ざしたFC町田ゼルビアの過去、現在、未来とは。
JAPANTWO(JP2):まず、今年からJリーグでプレーされているわけですが、率直にJFLとJリーグの違いはどのあたりに感じますか?
柳崎選手(柳崎):一番はスピードの違いです。後は、ゴール前の決定力やゴール前での厳しさが違うというのは感じます。
津田選手(津田):サッカーについては柳崎選手の言った通りですね。後は、やはりJリーグチームという看板を背負うということや、周りの見方、注目のされ方がJFLとは全く変わりました。試合の中継があるといったことも大きく違うことです。僕ら自身は変わっていませんが、周りを取り巻く環境が一番変わりましたね。
「下のチームには負けたくない。上のチームには必ず勝つ。」
JP2:これからはJクラブとして天皇杯等ではJFLや大学からの挑戦を受ける立場となりますが、その辺りの意識やチームの雰囲気はどのように変わりましたか?
柳崎:まだ天皇杯は戦っていないですが、やはり下のチームには負けたくないという気持ちにはなると思いますし、逆にJ1クラブと試合する時は必ずまた勝ってやるという気持ちは強くなりました。
津田:今までは純粋に追うという立場でしたが、今回からは追われる立場、まあJ1クラブに対しては追う立場ですが、その自分達の立場が変わりました。その立場が違うチームとやる時はきちんと勝ち上がらないといけないので、ここはチームとして必要なことだと思います。
J1への意欲を語る柳崎選手
JP2:練習から和気あいあいと楽しみながらやっている印象を持ったのですが、昇格してから普段の練習の雰囲気で変わった所はありますか?
柳崎: 練習は分からないですが、練習を見に来てくれるお客さんが増えたという印象はありますね。(笑)
津田: 練習自体の雰囲気は全く変わってはなく、そこは昔から受け継いでいるというか、チーム全体良い意味で仲が良く、皆で協力するというスタンスは何も変わっていません。そこに今年も新選手が加わりましたが、このスタンスはまた引き続きやっていくと思いますし、特に何かが変わったという感じではありません。
JP2:アルディレス監督が今年から就任されましたが、その点で変わったという所はありますか?
津田:監督自体、和気あいあいといった楽しさを重視しています。去年の監督がとても厳しい方だったので、そこのギャップが大きいですね。
JP2:昨年、Jリーグが定める規準によってFC町田ゼルビアのJリーグへの昇格が取り消されるということがありましたが、この知らせをどのように受け止めましたか?
柳崎:自分たちではどうすることも出来ないということを痛感しましたし、ショックだったというのが一番大きかったです。9月のシーズン途中で聞かされたことだったので、また来年も続けていけるかというのは非常に悩みました。
津田:僕達にはどうしようも出来ないことであって、それは会社や行政のところで上手くいかなかったということなので。ただ、僕達もフロントが一生懸命やっているところを見ていたので、どこに怒りの矛先を向けていいのか何とも言えない雰囲気がありました。
「諦めるのは簡単だったが、プロとしての意地が昇格を実現させた。」
JP2:その時の気持ちの切り替えはスムーズにいきましたか?
地域密着の大切さを強調する津田選手
柳崎:その時は相馬監督でしたが、シーズン途中だったので最後まで戦うことで一致団結してチーム全員で戦っていました。その結果として、Jリーグ昇格基準の4位以内をクリアしたので、自分たちの役割がきちんと果たせて良かったと思っています。
津田:相馬監督自身は僕達がこの事実を受け入れられるかは分からなかったとは思いますが、それでも僕達が次の日からもきちんと練習に来てしっかりやっている姿を監督も見て安心したと言っていました。僕達もプロ選手として昇格というのは大きなイベントですが、その前に試合の中でやるべきことがあったし、諦めるのは簡単でしたが、そこはプロとしての意地があったので。柳崎選手も言っていたように、その結果として昇格基準をクリア出来たことでその意地を見せつけられたと思います。
JP2:将来的にJ1への昇格をめざしていく中で、日々どのようなことを意識し、行なっていくべきだと思いますか?
柳崎:厳しく長いリ-グがまだ続きますが、このチームは一歩一歩上ってきたチームですし、まぁ何年かかるかは分かりませんが、昇格出来るようにチームで一丸となって戦います。それに、これほど地域に密着しているチームはなかなか無いと思うので、本当に地域密着して皆で作り上げながらJ1へと昇格出来ればと思っています。
津田:JFLからJ2へ上がった時もそうでしたが、ただ巧い選手がいるだけで勝てるリーグではないですし、リーグ戦は非常に長丁場なので、そういったところで一体感が大切だと思います。チームはもちろん、会社、フロント、サポーター、行政といった色々な人が一体となって戦わない限りJ1へは上がれないと思います。もちろん、選手はグラウンドで頑張るのですが、それを支えてくれる人たちがどれ程一体となってやれるかでJ1への昇格は遅くも早くもなるとは思います。
「地域密着型クラブとしてのスタイルをアピールする必要がある。」
JP2:ホームタウン活動等を通して町田という地域と密着していると実感しておられると思いますが、このようなクラブによる地域活動をどのように思いますか?
柳崎:中々ないことだと思いますし、新しく入って来た選手からすれば何でやるのかという感覚ですけど、そうやってきた結果として今の自分たちがあるというのは感じていますし、そのような面で続けていけることは続けるべきだと思います。もちろん、良くないことがあったら選手もコーチもそれはやめるべきだと思いますけど、本当にチームにとってプラスのことが多く、それが地域密着ということに繋がるのであれば続けられる限り、続けていければいいなと思います。
津田:僕たちが上がっていく上で、今まで子供たちを対象にしたサッカースクールなどをやってきて、そういう風に少しずつサポーターを増やしてきたのでこの活動は継続していくべきだと思います。他のクラブも地域密着型でやっているところが多いですが、じゃあ実際にどのような活動をやっているかといった時に、僕たちの強みというのは試合後のサッカースクールもそうですが他のチームがやっていない活動をしていることなので、そういったところを継続していくべきで、町田はこういうスタイルで地域密着しているということをアピールしていく必要があると思います。
JP2:ちなみに、これまでのホームタウン活動で、特にこれが楽しかったというのがあれば教えて下さい。
柳崎:サッカースクールももちろん楽しいですけれど、絵本の読み聞かせの時に子供達の反応が大きかった時はとても楽しく、逆に新たな自分が発見出来たので非常に楽しかったですね。
津田:僕もサッカースクールですね。僕自身、プロになってからそういった活動は初めてやったので最初は戸惑いがありましたが、やはり子供たちがとても喜んでくれていたので。試合後なので疲れていますけど、子供達と一緒にボール追いかけて、終わった後に今日はとても楽しかったと言ってくれるのは僕たちも嬉しいです。そういった活動はやりがいもあり、非常に楽しいですね。
JP2:選手の立場から、スポーツを通して地域を元気付けるには、どのようなことを心がけるべきだと思いますか?
柳崎:自分達がプロとしてお金を貰っているのもありますが、やはり一生懸命やっている姿を見せることで、見ている人にも感動や元気を与えられると思います。
津田:まぁ柳崎選手が言ったことが全てだとは思いますが、やるべき人がどれくらい楽しんでいるかに尽きると思います。僕たちが楽しんでいなければそれを受ける人も楽しめないですし、僕たちが楽しんでやれば自ずと楽しさは与えられるので、僕たち次第だと思います。
JP2:では最後に、まだまだリーグ戦もこれからですが今後の試合に向けて意気込みをお願いします。
柳崎:自分たちの力はこんなもんじゃないと思っていますし、J2に上がって間もないですが、JFLの時からJリーグを意識してやってきたので、そういう気持ちを証明していきたいと思っています。
津田:今のこの結果で、受け止めるべきものはしっかり受け止めて、足りないものは足りないと認識して少しずつでも改善していくことが必要です。やはり僕たちの力はこんなもんじゃないということを証明するために、今後の試合でも一つでも多く勝ちを重ねていきたいです。
選手プロフィール
柳崎祥兵
1984年6月11日生まれ。鹿児島県鹿児島市出身で、鹿児島実業高等学校、駒澤大学を経て2007年からFC町田ゼルビアに所属。ミッドフィルダーで背番号は15。
津田和樹
1982年7月26日生まれで東京都町田市の出身。東京学芸大学卒業後、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科にてMBAを取得。2001年に清水エスパルスに入団し、ヴァンフォーレ甲府を経て2005年からFC町田ゼルビアに所属。ディフェンダーで背番号は2。
ウェブサイト http://www.zelvia.co.jp