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株式会社ユナイテッドアローズ 取締役会長 重松理 氏 インタビュー | JAPAN TWO

株式会社ユナイテッドアローズ 取締役会長 重松理 氏 インタビュー

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日本の二大セレクトショップのユナイテッドアローズとビームス。その中でセレクトショップという業態を広め、日本に根付かせたのがユナイテッドアローズである。店舗数が増えても常にお客様を満足させ、ファンを魅了している。「会社は何のために存在しているのか」。経営理念というものをスタッフの隅々まで浸透させ、新しい時代を切り開いてきたその本質を探ってみた。

理念について毎日のように話していました

JAPANTWO(JP2):御社を設立される際、「店はお客様のためにある」という理念実現のためのルールに込めた思い、精神をお聞かせ下さい。

重松理氏 (重松):(株)ユナイテッドアローズの企業理念には「THE STANDARDS OF JAPANESE LIFESTYLE」つまり、新しい「日本の生活文化の規範」となる価値観の創造があります。これは創業当時から現在に至るまで、変わらぬ価値観です。いわば(株)ユナイテッドアローズの志ともいえます。

実は、「店はお客様のためにある」という言葉は、設立から2年ほど経ってから使うようになりました。私が考えるファッションというのは、ライフスタイルの衣食住という中の「衣」であり、その部分でお客様満足を提供することです。我々がよく使う言葉なのですが「おしゃれに装う」ことを提供することが使命だと考えています。

JP2:現在100店舗以上も展開されていますが、理念をどのようにしてスタッフに徹底されたのでしょうか?

重松:創業した当時は、お店は1店舗しかありませんでした。毎朝、朝礼時に、(株)ユナイテッドアローズは何のために存在するのか、社会に対してどのような貢献をしていくのか、何を目指して働いているのか、そのような理念について毎日のように話していました。

その後、店舗数が増えていくとともに、会社の理念が明確化していったので、理念を書いた用紙をお店のバックヤードに貼っていました。

新卒採用を始めてから、新卒社員研修では、大半の時間を理念の理解に割いています。社員には売り場でお客様と接するようになってから、接客の技術的な部分や商品の話をします。そのため、売り場に出る前は、「お客様に対する心構え」、「お客様の悩みを解決することが使命である」ということしか話をしませんでしたが徐々に広まり、その後書面化され、最終的には冊子になりました。今でも当社では理念研修を行っています。

それは教育指導の根幹にあることで、全てのスタッフに対して理念を徹底することは、弊社にとって特別なことではないのです。

「時代と共に変わってはいけないもの」がある

JP2:スタンダードは時代と共に変化すると考えますが、現在は企業理念の「THE STANDARDS OF JAPANESE LIFESTYLE」についてどのように捉えていらっしゃいますか?

重松: 今後、弊社の理念は「グローバルに通用する日本的なライフスタイルの規範」という標語にすべきだと思っています。しかしながら、我々が提供している「衣」の部分は時代と共に変わるものなのでしょうが、一方で「時代と共に変わってはいけないもの」というものも存在します。その「時代と共に変わってはいけないもの」が、我々の考えるスタンダードで規範の基にあるのです。

日本人のような感性の細かさを持っている方が海外では少ないのでは

JP2:世界に目を向けますと、御社のように多店舗展開するセレクトショップはほとんど広がっていません。日本ではなぜ支持されているのでしょうか?

重松:なぜ、欧米ではセレクトショップが少ないのかというと、セレクトの視点というか、セレクト力という技術が継承できなかったことが要因の一部だと思います。これらの技術はある意味、曖昧な技術ともいえます。そのため継承することができないまま、チェーン展開し、お客様からの支持を集められなかったのではないでしょうか。

もう一つの要因としては、日本では「階級=クラス」がないということも大きいと思います。高校生がラグジュアリーブランドのバッグを持っているような社会背景がありますから。欧米では、セレクトショップで買い物していた方々というのは、ある程度、富裕層の方たちで、そうなると絶対数が少ないです。そして、彼らはやはり単一ブランド専門店の商品の方がわかりやすく買いやすいため、専門店のラグジュアリーブランドに流れていきますよね。

また、日本人のような感性の細かさを持っている方が少なかったのではないか、と私は推測しています。その欧米のセレクトショップを目指していたのですが、結果的に欧米では広がらず、日本独特の業種・業態になったと実感しています。

海外展開の難しさと今後の展開について

JP2:特異な業種・業態ということが海外展開の難しさに結びついているのでしょうか?

重松:やはり、欧米だけでなく、アジアでも単一ブランド専門店の方がわかりやすく、買いやすいのでしょう。また、セレクトショップは目利きの商売であるというのもそうなのですが、商品を詳しく知った者の丁寧な接客というのが相まって一つの価値になります。そこも海外展開する上で、課題の一つです。「この商品とこの商品を組み合わせると素敵ですよ」と接客/ご提案/おすすめできることが強みなのですから。その接客が出来なければいけないのです。

JP2:海外に店舗を出されるお考えはございますか?

重松:今後の海外への展開につきましては、すでに香港のセレクトショップにおける卸販売、シンガポールなどにおけるテストセールマーケティング活動を行っております。本格的な進出については、世界経済とマーケットの動向を伺いながら慎重に判断していこうと考えています。

日本では価値を見分けることの出来る感性が育った

JP2:海外展開のお話をお伺いしましたが、日本のファッションの魅力と、海外のファッションとの違いについてどのように考えられていますか?

重松:日本のファッションの魅力はクラスがない故の多様性です。そしてその多様性が海外との違いにもなっています。日本は、この社会構造の中で誰もが様々なモノ・コトを見て、価値を見分けることの出来る感性が育ったのだと思います。これは非常に貴重なことです。これをいかに海外に輸出して行けるか。日本人独特の「あうんの呼吸」のようなことをいかに伝えるかが難しいです。反対に、外国人から見ると日本のその「あうんの呼吸」というものが理解できず、難しいのではないでしょうか。

「食」「住」にもアンテナを張る

JP2:日本のファッション業界をリードするために、常日頃、ファッション以外で大切にされていることはありますか?

重松:我々が提供していることは衣食住の「衣」ですが、「食」「住」にもアンテナを張り巡らしています。「住まう」ということにも様々なスタイルが出てきます。住宅展示場や新しい施設に行くこと、そして、博物館、美術館、日本庭園など、生活全般が集約されている所には足を運び、そこで感じたことをファッションに取り入れられればと思っています。生活全般の流行には非常に敏感に、そして常に大切にしています。

ファッションというものが「癒し」「元気づけ」になった;

JP2:昨年、東日本大震災と言う我々が経験したことのない災害が発生しました。大震災が日本人の価値観を大きく変えたといわれていますが、日本のファッションに与える影響についてどのようにお考えでしょうか?

重松:日本のお客様はちょうど1年ほど前くらいから、長いデフレで節約疲れをしていたところでした。そして、震災直前にはだいぶお客様も手の届く範囲でワンランク上のおしゃれを楽しむことを取り戻していました。その矢先の出来事でしたので、正直、ファッション業界として打撃を受けたことは事実です。被災地に追悼の意を表しながらも、我々がやらなければいけないことは、店頭でお客様の満足を提供することでした。それが最短で日本の復興、日本経済を回復させることですから。

その結果、ファッション業界が落ち込んだのは、3週間で、4週目から回復を始めました。なぜ、回復をはじめたのか。その理由ははっきりとしませんでした。未だに結論は出ていませんが、価値観が変わったということがひとつの要因ではないかと思っています。ファッションが「癒し」「元気づける力」になったのではないかと思います。

海外の読者へメッセージ

JP2:最後に読者へのメッセージをお願いします。

重松:「THE STANDARDS OF JAPANESE LIFESTYLE」という理念を実現するために、国内外問わず、選りすぐりの商品をお客様に提供しています。日本には、日本ならではの独特の細かい感性の物選びと、物作りができる環境・背景がまだ残っています。その環境の中でファッションを通じて、お客様により高い満足度を提供できるように努力してまいります。是非、期待していてください。

 

重松 理 株式会社ユナイテッドアローズ 取締役会長

1949年12月4日神奈川県逗子市生まれ。1973年、明治学院大学 経済学部卒業後、婦人服メーカーにて営業を経験。その後、1976年にセレクトショップの草分けとなったBEAMS設立を企画提案し、創設に携わる。BEAMS第1号店の店長を皮切りにプロデューサー的役割を果たし、株式会社ビームス常務取締役を経て、1989年に退社。1989年、株式会社ワールドとの共同出資により株式会社ユナイテッドアローズ設立。代表取締役社長に就任。2012年4月1日より取締役会長に就任した。(インタビュー時は代表取締役社長)

Website http://www.united-arrows.co.jp

Photo by Yuuki Honda

 

 

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