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【LIGHTDESIGN INC.】東海林弘靖氏インタビュー | JAPAN TWO

【LIGHTDESIGN INC.】東海林弘靖氏インタビュー

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照明デザイナーとして国内外で活躍するLIGHTDESIGN INC.代表、東海林 弘靖氏。 長きに渡り光を追及する【光のソムリエ】の幼少期から照明デザイナーになるまでのエピソードや、具体的なお仕事内容など様々なお話を伺いました。インタビュー後半では、東日本大震災や光の無い島を訪ねたことをきっかけに増していく光への熱意、そして光の可能性について語って下さいました。

東海林さんの幼少期のエピソードや建築に興味を持ったきっかけを教えてください。

東海林 弘靖氏(東海林)

幼少期は福島県の田舎で過ごしていたのですが、小学生から中学生にかけては父の転勤に伴い、5回の転校を経験しました。土地に定着することがありませんでしたが、転校生というレッテルをプライドにしていましたね。中学生の時に父が自宅を新築したのですが、その際に建築士の仕事を近くで見て、子供ながらにその面白さに魅かれたのが建築に興味を持ったきっかけです。その頃からわくわくしながら簡単な間取り図を書いてみたりしていましたね。それから大学進学にあたって、工学院大学の建築学科に進むことになりました。

建築照明というお仕事との出会いについて教えてください。

東海林

大学で勉強してみて建築は大変なものだということに気付きました。どうしたら良い建築家になれるか、自分なりに探っていくうちに、「条件が悪いな」と思い始めました。例えば家柄。調べてみると偉大な建築家には、家柄の良い方が多かったんです。そういった方々は、早いうちに親や親戚からも仕事のチャンスがあったりして実績をつくっていくことができるんですね。しかし、残念ながら私はその様な環境にありませんでした。それならば、「人とは違った付加価値のある建築家になればいいんだ」と思うようになり、ちょうどその頃に出会ったのが建築照明でした。今まで学んできた建築に照明という付加価値をつけることで、なんとなく新しい世界を感じたのが今に繋がっています。

建築照明との出会いから照明デザイナーになるまでの経緯を教えてください。

東海林

建築照明との出会いは、新宿NSビルが日本で初めて建築照明を取り入れたことが掲載されていた雑誌でした。その特集に感銘を受け、その照明デザインに携わっていたTLヤマギワ研究所に入社することを決意しました。当時はまだ建築照明の知識や技術は全くなかったのですが、何としても入社したかったのでアピールの仕方を必死に考えましたね。結果的には、3メートルほどの長さの巻物に筆字で入社したいという熱意を綴って送りました。それから何度も会社を訪ね、面接をしてもらい入社しました。TLヤマギワ研究所に7年間ほど勤めた後に、退社をしてLighting Planners Associatesで働き始めました。

Lighting Planners Associatesに入社されたきっかけはなんですか。

東海林

TLヤマギワ研究所の上司である面出 薫氏の独立に着いて行った、という形になります。それまでは企業の中にいたので、デザインはするもののやはり制約がありました。独立をして「どんな資本の制約にも縛られないデザインを考えたい」というのが照明デザイナーの本来の姿だと思い、着いて行きました。

その決断力や行動力は東海林さんの性格や経験、自信から来るものですか。

東海林

自信というよりも思い込みと勘ですね。基本的には、「これだ」と決めたらまずは動く。間違っているかもしれないけど、間違っていたら戻ればいい。決して幼いころから行動力があったわけではないですよ。昔はもじもじしていましたが、小・中学生の時に繰り返した転校で多少鍛えられたのかもしれないです。新しい学校に顔を出した初日が勝負でしたからね。新しい環境、知らない人たちの前で自分をアピールしなきゃいけないという経験をしたことは良かったのかもしれません。

年間に受けるお仕事の件数と流れを教えてください。

東海林

依頼を受けるのは年間約20プロジェクトです。建築なので2~3年かけて創り上げたりも するため、常時約50プロジェクトが動いているような状態です。既存の建物に照明を施すだけではなく、ほとんどのプロジェクトで、建築やランドスケープの設計段階から参加しているので、照明に照らされる壁の素材も一緒に選んだりしています。プロジェクトの流れとしては、まず設計者からプロジェクトの概要やコンセプトを説明いただくのですが、それを受けて、照明デザインの考え方を提示していきます。そして具体的にイメージを共有するための光を図面に描いたり、模型に光を入れて検証をしたりしています。成果物としては、照明器具配置図や仕様図、リストに照度計算書なども提出しながら、現場での実験、最終調整を経て完成といった運びです。ただ、着工している間に条件が変わることもあるので、常時確認しながら進めていきます。

沢山のお仕事をこなしながら学校などで講演をしている理由はありますか。

東海林

最初に勤めたTLヤマギワ研究所に入社する際、面接をしてくださった大先輩に「僕たちは光の伝道師なんだよ」と言われました。伝道師とは歴史上の偉人であって、普段私たちの生活には関係ないと思っていたので、その言葉には驚きました。その言葉が今でも頭に残っていて、光の素晴らしさを伝えることができればいいなと思い、講演をしています。優秀且つ、私達とはまた違った考えで世の中を照らす新人が育ってくれるのを楽しみにしています。

2011年の震災をきっかけに照明デザインの在り方や、ご自身の心境に変化はありましたか。

東海林

勿論、大きなダメージを受けました。私達は無駄な電気を沢山使って仕事をしていたのではないか、この仕事は必要ないのかもしれないとまで思いました。しかし、強制的に電気が止まった事により光の大切さに気付いたり、光を組み立て直したりする機会に繋がったと思います。更に、それまでは暗いところを明るくするのが照明だと多くの人は思っていましたが、震災後は暗さにも目を向けるようになってきました。暗さというのはネガティブなものではなく、とても心地の良いものなんですよね。震災直後にNHKの『旅のチカラ』という番組の企画で、パプアニューギニアの電気の無い島を訪問しました。そこには夕日やホタルの光などといったあまりに美しい自然の光がありました。そして現地の人たちは夜になるとヤシの実から絞った油でほんの微かな光を灯し生活をしています。わずか0.11ルクスの灯りに照らされた島の長老の顔を見ながら、この島において照明とはなんですか?と尋ねてみると『光は命のシンボルだ』と答えられたんです。今日も一日を無事に過ごすことが出来た証として光を灯す。光が灯らない家があれば慌てて駆けつけるのだと。それは私が考えもしなかった答えで、涙を堪えることが出来ないほどでした。大事なことを忘れていました。震災後に悶々としていた私にとって、照明について深く考えさせられる貴重な旅でした。

一言で表すと、東海林さんにとって光とは。

東海林

光は『命の証』です。

プロフィール

LIGHTDESIGN INC. (http://www.lightdesign.jp/)
東海林 弘靖
照明デザイナー
国際照明デザイナー
International Association of Lighting Designers Professional会員

1958年生まれ。
工学院大学・大学院建築学専攻修士課程修了。

光と建築空間との関係に興味をもち建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査。アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜などの自然の美しい光を取材し続けている。光との出会いの感動を糧にして、超高層建築のファサードから美術館、図書館、商業施設、レストラン、バーなどの飲食空間まで幅広い光のデザインを行っている。Award of Excellence、Special Citation(国際照明デザイナー協会)、Award of Merit(北米照明学会)、グッドデザイン賞(日本産業デザイン振興会)他多数受賞。

著書紹介
『デリシャスライティング』(TOTO出版) \2200
素人でも気軽に楽しめる照明デザイン40レシピを掲載。簡単なものからマニアックなものまで難易度や効用、コスト、作業時間、光源の種類がアイコン付きでわかりやすく説明されています。使用する製品名やその販売元なども記載されているため、どなたでも日々の暮らしを楽しくする照明術を実践できる本となっています。

その他の著書・共著・連載
『光のソムリエ・プルミエール』(LIGHTDESIGN INC.)
『日本の照明はまぶしすぎる』(角川oneテーマ21)
『デリシャスライティング』(TOTO出版)
『うるおいライティング』光は使いこなすもの(共同通信社)
『みんなの住まい』光のソムリエ(三井不動産レジデンシャル)
『新建築住宅特集』「あかりのい・ろ・は」(新建築社)
『光と色の環境デザイン』(オーム社)
『都市環境デザインの仕事』(学芸出版社)
『20-21世紀DESIGNINDEX』照明デザイン(INAX出版)
『物販店の照明計画』(商店建築社)
『飲食店の照明計画』(商店建築社)

 

 

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